「洗い出し」という左官工法をご存知でしょうか。名前は知らなくても、きっと駐車場や玄関などで一度は目にしたことがあるはずです。
洗い出し仕上げには砂利やセメントなどを使いますが、砂利だけ・セメントだけで仕上げるのとどんな違いがあるのでしょうか。
今回は、洗い出し仕上げのメリットや施工方法、どのような部分に施工できるかなどをご紹介していきます。家やお庭の素材選びにお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
目次
洗い出し仕上げとは
洗い出し仕上げとは、砂利を混ぜたセメントやモルタルを塗りつけて仕上げる伝統的な工法のひとつです。セメントなどが完全に固まってしまう前に水洗いして、石の表面を浮き出すように仕上げます。
洗い出し仕上げは、ほかの工業材料にはない自然な風合いが特徴的です。また、混ぜる砂利の大きさや種類によってさまざまな色合い・質感を表現できます。
さらに、砂利を混ぜて仕上げることでセメントやモルタルで仕上げるよりも耐久性と防火性が優れています。このような見た目と性能の特徴から、さまざまな建築物に使われている仕上げ方です。
ここで、洗い出しによく使われる砂利をいくつかピックアップしてご紹介します。
大磯:グレー・緑系の砂利で、落ち着いた色合いです。
南部:土のような茶系で、控えめで上品な色合いです。
桂林:薄い茶色をベースに、グレーやピンク色の砂利が含まれ、明るい色合いながら落ち着いた雰囲気です。
白仙:名前のとおり白さが特徴の砂利で、明るい印象を与えます。
桃山:薄い茶色をベースに、赤茶色やグレーの砂利が混ざり、やわらかながら華やかな印象です。
いかがでしょうか。ここで紹介したのは一部の種類ですが、さまざまな色合いの砂利があり、選び方によってどのような場所にも合わせやすそうですよね。
見た目よりも難しい!砂利を「洗い出す」方法と手順
洗い出し仕上げにはいくつかの施工方法があります。ここからは洗い出し仕上げの手順の一例をご紹介していきます。
1.事前準備
施工する場所に下地となるコンクリートなどを施します。
2.砂利とセメントを混ぜる
ミキサーなどを使って、砂利とセメントと混ぜます。水を加えさらに混ぜて、適度なやわらかさになるよう調整していきます。
3.塗る
下地の上にモルタルなどを薄塗りし、その上から砂利の混ざったセメントを塗り込んでいきます。
5.ならす
定規でなめらかにならしながらコテで押さえます。
6.乾燥させる
少し時間をおいて乾燥させます。しばらく時間をおいても残っている表面の余分な水分は、新聞紙などで吸い取ります。
7.洗い出し
水分を含ませたスポンジや噴霧器などで優しく洗い出していきます。洗いすぎず、そしてまんべんなく全体を洗い出します。最後に、強めにしぼった雑巾などを使ってさらに表面を洗っていきます。砂利がきれいに見えるようになるまで何度も何度も洗い出し、やっと完成です。
このようにまとめると簡単そうに感じられるかもしれませんが、砂利の洗い出しには熟練の職人技が必要です。たとえば、砂利を洗い出すタイミングの見極めは気温なども考慮しなければなりません。
タイミングが早く、十分に乾燥できていないと残ってほしい部分まで洗い流されてしまいます。逆にタイミングが遅いとセメントが固まって洗い出せなくなってしまいます。
また、砂利が混ざったセメントは塗りにくくしっかりした左官技術が必要ですし、洗い出しの作業では石が最高の見え方になるように調整していく必要があります。高度な技術があってこそ、きれいに洗い出し仕上げを施すことができるのです。
なお、今回ご紹介したセメントと砂利を混ぜてから塗る方法のほかにも、下地コンクリートの上にモルタルを流し、その上に砂利をまいてならすという方法もあります。
砂利の使い方によってはアレンジ自在!洗い出し仕上げの魅力
施工に技術や時間を必要とする洗い出し仕上げですが、洗い出し仕上げをおこなうことでさまざまなメリットや魅力があります。ここからは、洗い出し仕上げの魅力に注目しながら特徴をおさらいしていきましょう。
固めているから砂利が飛び散らからない
ただ砂利をまくだけだと、人や車が通ったり風が吹いたりすることで散らばったり移動したりしてしまいます。また、砂利だけだと見た目にも味気なさを感じたり、通るたびに音が鳴ってうるさいと感じたりする方もいらっしゃるでしょう。
しかし、洗い出し仕上げでは砂利を使用しますが、固めてあるので散らかることがありません。
見た目も独特な風合いでおしゃれな仕上がりですし、貝殻やガラス玉などを埋め込んで自分好みにカスタマイズした洗い出しをおこなうことも可能です。もちろん、踏んだときの音も砂利よりは静かでしょう。
じつは洋風のお庭にも合うんです
砂利と聞くと、昔ながらの日本庭園を想像する方も多いでしょう。しかし、洗い出し仕上げは洋風のお庭にもぴったりです。
先ほどご紹介したように、砂利には黒、グレー、茶、白などのさまざまな色があり、洋風のお庭にもなじむ色合いのものが多くあります。また、砂利の粒の大きさによっても雰囲気が変わります。このように、洗い出し仕上げは砂利の選び方によっては洋風のお庭にもなじませることができます。
先ほどふれたように、貝殻やガラス玉を使ったオリジナルの洗い出し仕上げをおこなうことも可能です。洋風イメージのお庭にもぴったりの仕上げ方と言えるでしょう。
セメントで固めるから強度がある
洗い出し仕上げは、砂利を混ぜているのでセメントやモルタルで仕上げるよりも耐久性と防火性が優れています。適切な施工をすることでひび割れにも強く、強度が必要となる部分への施工も可能です。
コンクリートよりおしゃれかも?砂利の洗い出しの活用例
洗い出し仕上げの魅力がわかったところで、次は実際に建物や庭のどのような部分に活用できるかご紹介していきます。
玄関前
家の顔とも言える玄関。玄関がおしゃれだと、家全体の雰囲気もよく見えますよね。独特な品格と存在感のある洗い出し仕上げは、玄関前にぴったりでしょう。
駐車場
駐車場は車が出たり入ったりするので、コンクリート仕上げだとタイヤ痕などの汚れが目立ってしまうこともあります。洗い出し仕上げにすることで汚れが目立ちにくくなりますし、ひび割れにも強く、表面の砂利が雨天・積雪時のすべり止めとしての機能を発揮してくれます。
お庭の通路や階段
すべりにくく飛んで散らかることもない洗い出し仕上げは、人が通るお庭の通路や階段にもぴったりです。玄関と同じく、玄関アプローチも家の「顔」です。見た目や機能にこだわってみてもよいのではないでしょうか。
塀や壁にも
洗い出しは、地面だけでなく塀や壁にも施工することが可能です。また、外壁だけでなく室内の壁や床、天井などにも施工できます。先ほどメリットとしてあげたように、洗い出し仕上げは強度に優れています。そのため、構造上大きな負荷のかかる部分にも施工できるのです。
まとめ
外構などによく使われる素材には、タイル、レンガ、砂利、コンクリートなどさまざまなものがあります。そのなかで、今回は砂利の洗い出しという仕上げ方をご紹介しました。
洗い出し仕上げは、強度に優れ砂利の選び方によりさまざまな風合いを楽しむことができます。和風・洋風どちらのイメージにも合わせやすく、玄関や壁面などいろいろな場所に施工することが可能です。ただ、施工には高度な技術が必要なのでDIYにはあまり向いていないかもしれません。
それぞれの素材のメリットやデメリットを考え、ぴったりの素材を選んで家・お庭づくりを楽しみましょう。